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最終章では、これまでにないような冒険的な画作りも考えているので、楽しみにしていてください#2 コンポジット&ビジュアルディレクター:髙津純平

画作りの視点から見る劇場版「ペルソナ3」

まずはじめに、髙津さんはどのような経緯で劇場版「ペルソナ3」に関わられることになったのでしょう?

4年ほど前になると思うのですが、今とは異なる制作スタジオにいたときに、本作のプロデューサーの方に、メインの処理設計をしてほしいと誘われのがきっかけですね。それは、劇場版「ペルソナ3」の制作が始動する前で、実際に制作したのはTVアニメ「ペルソナ4」の劇場でイベント公開された「PERSONA4 the Animation -The Factor of Hope-」のラストで流れた予告が最初でした。

髙津さんは、コンポジット&ビジュアルディレクターという形で本作に携わられていますが、具体的にどういったセクションのお仕事になるのでしょう?


撮影処理前(左) 撮影処理後(右)

なかなか説明するのが難しいセクションで、地元の友人などに久しぶりに会ったときなどに「どんな仕事なの?」と聞かれて答えても、あまり伝わらないんですよ(笑)。まず、コンポジットディレクターですが、こちらは通常のアニメでいうところの“撮影監督”です。素材の管理や納品時期から逆算して、ここまでに素材をもらわないと作れないなど制作サイドとやりとりするのがお仕事です。通常であれば画作りやムービーのチェックも行いますが、劇場版「ペルソナ3」ではビジュアルデザイナーがチェックをしています。 次にビジュアルデザイナーですが、こちらは画作り専門のお仕事になります。劇場版「ペルソナ3」では、基本の処理の設計や、影時間など特殊な雰囲気が求められるシーンなど、画面の作り込みを行っています。あとは、ムービーをチェックして、それがOKなのかリテイクなのかという最終的な判断を下すセクションでもあります。今まではビジュアルデザイナーだけでしたが、第4章から両方掛け持つことになりました。

その作業のなかで、印象に残っているシーンを挙げるとすれば、どんなシーンですか?


撮影処理前(左) 撮影処理後(右)

第1章からだと、やはり主人公の結城 理が初めてペルソナを召喚するシーンは印象に残っていますね。あのシーンがしっかり作りこまれていなければ、劇場版「ペルソナ3」という作品そのものがダメになってしまうという意気込みで作っていたので、記憶に強く残っているシーンです。銃のハイライトや、結城 理が月光に照らされていたので逆行の処理、輪郭をボケさせて口元にピントを合わせるなど、本当にさまざまな処理を加えたのを覚えています。ビフォアアフターでお見せできれば、その違いをわかってもらえると思うのですが、これも僕のお仕事を説明しにくい部分ですね。

逆に、1番大変だったシーンはどのシーンでしょう?

シーンというより、つらかったという記憶があるのは第2章のすべてですね(笑)。決して田口監督を責めているわけではないのですが、第2章は戦闘シーンが多かったので、そうなると僕のお仕事としては大変になるんです。また、第2章は、影時間ごとに色味を変えるといったことにもチャレンジしていたので、ビジュアルディレクターとしては大変な章でした。

最終章へ向けて、画作りへの意気込み

第1章から第3章まで作品に携わられたなかで、作業的に変わったことなどはあるのでしょうか?

やはり章を重ねることで、こなれてきた部分はあると思います。第1章では手探りな部分も多かったのですが、第2章で手ごたえを感じ、第3章では安定した作業になっていたと思います。

次の第4章は最終章となるわけですが、第3章までには見られない新しい画作りなどは考えられていますか?

劇場版「ペルソナ3」は章ごとに監督が異なっているので、各章で求められる画も違ってくることがおおくて、章ごとに新しい画作りを目指していた部分もあります。とくに印象に残っているのは、第2章で田口監督が「花火のシーンは気合を入れてくれ」と何度も言ってきたことですね。打ち合わせのたびに言われたのが、すごく印象に残っています。

第4章も田口監督が指揮をとられますが、今回はいかがですか?

まだ制作がスタートしたばかりで、具体的なシーンとしては出ていませんが、なにか新しいことをやりたいという話は聞いています。個人的にも、今までの章ではお見せしていないような冒険的な画作りも考えているので、そこは楽しみにしてもらいたいですね。

ちなみに、現在の進行状況はどの程度のものなのでしょう?


撮影処理前(左) 撮影処理後(右)

じつは、僕のセクションとしてはまだほとんど始まっていない状況なんです(笑)。少し前に公開されたPVの処理以外だと、今は美術ボードを見て構想を広げている段階です。きっと、この暑さが和らぐころには忙しくなっているはずです(笑)。

このリレーインタビューは、制作チームのみなさんにお話をうかがっていくわけですが、制作チームの特徴を挙げるならどのような特徴がありますか?

劇場版「ペルソナ3」の制作チームは、ほかの制作チームと比べると比較的若いんです。年齢が近いということもあって、各自が意見を出しやすい雰囲気があると思います。監督に言われるままではなく、それぞれが見せたいものを考え、その意見をぶつけ合えています。そのお陰で各セクションの持ち味をうまく引き出したフィルムになっていると思っています。

髙津さんはTVアニメ「ペルソナ4 ザ・ゴールデン」にも携わられていますが、劇場版「ペルソナ3」とTVアニメ「ペルソナ4 ザ・ゴールデン」の画作りの面で異なる部分はありますか?

P4GAでは、できるだけ処理を省いた画作りを目指しました。それは、手抜きというわけではなく、シンプルにした画作りだから見せられる魅力があったからなんです。それと比べると、劇場版「ペルソナ3」は、さまざまな処理を足し算して厚みを出すことで、劇場アニメならではの画を作っているという違いがあります。劇場版では、その重厚さを感じてもらえるとうれしいですね。

ちなみに、「ペルソナ3」のなかで1番お気に入りのキャラクターを挙げるとすれば誰になりますか?

主人公の結城 理も好きですが、僕は伊織順平が好きなんです。「ペルソナ3」のなかでは、ヒーロー然とした部分もなく、1番現実味がある視聴者にもっとも近いキャラクターなところが気に入っています。

最後に、劇場版「ペルソナ3」第4章を楽しみに待っているファンにメッセージをお願いします。

ラストということで、最後にハンカチが手放せなくなるような画作りができるよう気合を入れて作っていこうと考えています。みなさんに感動していただけるようなフィルムに仕上げていきますので、公開まで楽しみにお待ちください。